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詩•筆跡―館蔵展

  • 展示期間:2014-07-31~2015-07-29
  • 展示場所:齋東詩舎(台北市済南路二段25号)


きっかけ


空に一抹の青さがあれば、詩がある…。


人が詩を書かなくなったら、鳥が書く。


鳥が書かなければ、風が書き、


風が書かなければ、カタツムリが書き、昆虫が書く。


――― 王鼎鈞


「詩•筆跡」展は、詩人たちの直筆原稿にスポットライトを当て、「純粋」を基本として、国立台湾文学館に所蔵されている詩人たちの直筆作品やその他作家による詩の直筆作品を展示しています。多数ある館内所蔵品から性別・民族・言語・テーマといった要素を持ち合わせたものを選りすぐり、多種多様かつヘテログロシア(様々な声)な台湾詩壇の風采を表現しました。


本展では全体を「台湾古体詩の美」、「言語を超越する詩」、「無限の詩」、「Formosa詩の台湾組曲」、「周夢蝶記念展」という5つのコーナーに分けて紹介します。詩における文字の美しさ、様々な言語で踏まれた韻、創作者による言葉遊びなどが展示されています。「詩•筆跡」特有の素朴さ・深さ・奥深さが表されているだけでなく、ドキュメンタリーフィルムも同時上映して、直筆原稿の行間を読んでいただき、皆様を詩人の内面の世界へと誘います。


本展では周夢蝶記念展のほか、洪棄生、黄純青、林幼春、頼和、周定山、郭水潭、巫永福、呉瀛濤、王昶雄、琦君、陳秀喜、林亨泰、杜潘芳格、錦連、洛夫、蓉子、余光中、羅門、管管、商禽、林鍾隆、張黙、瘂弦、鄭愁予、林宗源、李魁賢、岩上、林煥彰、楊牧、席慕蓉、呉晟、曽貴海、李敏勇、蕭蕭、林梵、白霊、李勤岸、利玉芳、陳義芝、陳黎、陳明仁、林央敏、向陽、卜袞・伊斯瑪哈單‧伊斯立端、張大春、瓦歴斯‧諾幹ら46名(年齢順)の作家の作品も展示しています。




台湾古体詩の美


台湾の古典文学はオランダ統治時代末期に沈光文が来台した時から始まり、明の鄭氏統治時代、清朝統治時代、日本統治時代、戦後を通じて今もなお多くの愛好家によって創作、吟唱、鑑賞が続いています。本展では台湾古典文学において実に貴重な直筆作品を紹介します。館内所蔵品の中でも国宝級重要8作品に数えられる洪棄生の手による抄本のほか、日本統治時代の林幼春、頼和から戦後の周定山、黄純青らの作品も展示します。古典文学における文人たちはしっかりと下打ちされた基礎を持ち合わせているだけでなく、書道でも厳しい訓練を十分に重ねています。だからこそ、作品からは筆跡の美しさとそこに込められた意味の美しさが漂っているのです。




言語を超越する詩


台湾では民族や言語が多様であり、詩人が創作を行う際にはそれに最もふさわしい言語を選ぶ傾向にあります。それは最も慣れ親しんでいる母語かもしれないし、その当時の公用語かもしれません。本展では郭水潭、呉瀛濤、陳秀喜、林亨泰、杜潘芳格、錦連、管管、商禽、瘂弦、林宗源、曽貴海、林梵、白霊、李勤岸、利玉芳、陳明仁、林央敏、卜袞・伊斯瑪哈単‧伊斯立端、瓦歴斯‧諾幹といった詩人の直筆原稿を展示しています。彼らが詩を書くときに用いた言語はそれぞれ異なるものの、芸術・創作に対する厳しい考え方や社会・人々・郷土に対する深い思いは同じです。




無限の詩


本エリアで展示している作家の中でも巫永福は小説によって文壇で頭角を現した人物です。彼はやがて俳句・台湾語詩・中国語詩などの創作にも力を入れます。王昶雄は日本統治時代における代表的な小説家ですが、彼が書いた「阮若打開心内的門窗」(もしも心の扉を開くなら)という詩はあまりにも有名です。琦君は故郷に思いを馳せた散文や小説を得意とする作家ですが、彼女の詩には優雅な可憐さが漂っています。余光中は右手で詩を書き、左手で散文を書くと讃えられただけでなく、翻訳や評論にもその才能を発揮しました。楊牧は詩でもって文才の名を欲しいままにし、散文や評論面での造詣も極めて深い人物でした。林鍾隆と張大春の2人もオールマイティーな作家で、小説や散文でその非凡な才能を発揮しています。李魁賢と席慕蓉は詩人としてその名を文学界に轟かせましたが、彼らの評論や散文も遜色がありません。




Formosa詩の台湾組曲


郷土の土は詩人に創作面において、栄養分をたっぷりと提供してくれます。かつてポルトガル人が「Ilha Formosa」(イラ・フォルモサ)と感嘆の声を上げた麗しの島・台湾の豊かな物産と秀麗な自然は、これまで詩人の創作対象とされてきました。本エリアに展示されている直筆原稿には、自然の光景から日常生活の些細な一場面活まで、土地に対する賞賛から家庭に対する思いまで、至る所で台湾に対するみなぎるような詩人の情感や関心が表されています。洛夫、蓉子、羅門、張黙、岩上、林煥彰、呉晟、李敏勇、蕭蕭、陳義芝、陳黎、向陽といった詩人たちが力を合わせて書き上げた詩による台湾組曲です。




周夢蝶記念展


ここの寒さは酒の如く、詩と美しさを封じ込めてしまった


虚しかろうが、手で言葉を交し、言葉を忘れた満天の星を呼び寄せる……


過去は立ち止まり、未来も未だ来ず


私は「いま」を生きる僕(しもべ)であり、皇帝でもある


――「孤独の国」


孤独の国の帝王であった周夢蝶は、2014年5月1日、新北市新店区にある慈済病院で死去した。享年94歳。この記念展では周夢蝶が生前国立台湾文学館に寄贈した詩の直筆原稿と、詩壇の仲間から寄付・借用出展された直筆作品を展示しています。詩人・鄭愁予は周夢蝶を偲んで、その高潔な人格と詩風を吉祥である「卿雲」になぞらえた新作を執筆しました。筆跡と写真をご覧になり、1つの時代を築いた詩人・周夢蝶のその人なりをじっくりとご堪能ください。




100人の詩人


黄明川監督による台湾詩人の群像撮影。インタビュー・朗読・デジタル編集と詩人の映像・声・作品を結びつけることで台湾詩人としての姿が見事に引き出されています。このフィルム鑑賞後、きっと台湾詩人をもっと身近に感じることでしょう。