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知られざる幸福──龍瑛宗寄贈展

  • 展示期間:2015-07-14~2015-12-13
  • 展示場所:国立台湾文学館‧2F展覧室E

龍瑛宗(1911-1999)、本名は劉栄宗。新竹県北埔生まれの客家人作家。台湾商工学校卒業後、台湾銀行や合作金庫の銀行員として勤務しながら、『台湾日日新報』、『台新旬刊』、『中華日報』などの新聞・出版社の記者や編集者として活躍しました。また『文芸台湾』、『台湾芸術』といった組織にも参加し、左手で執筆活動を行い、右手で算盤をはじくような作家でした。龍瑛宗はどもり症の上に重度の喘息持ちで幼少の頃から体が弱く、彼にとって生きることはまるで疾風に勁草を知るようなことで、命や彼を取り巻く境遇と常に戦っていました。内向的だった彼は子供の頃から世界の名作を中心に読書に親しんでいました。このようにして培われた鋭い観察眼により彼の文学の世界は精彩に富み、創作力を豊かにしていきました。至る所で制限を受け、不自由な時代。どんなに孤独でも文学があったからこそ人知れぬ幸せを感じ、このような幸せがまさに台湾文学において成功するために不可欠なものでした。1937年、処女作である小説「パパイヤの街」で東京の雑誌『改造』の第9回懸賞創作発表に入選し、日本の文壇にデビューを飾りました。その後、小説をはじめ、現代詩、評論、脚本、隨筆などの作品を次々と発表。これらの作品はいずれもモダニズムにリアリズムを兼ね備えた独特の作風を備えています。なかでも自伝体で書かれた小説、実に細やかなタッチで描かれた風景、台湾文化の研究など、いずれも彼の作品でしかお目にかかれないものばかりで、作家としての芸術的才能が見事に現されています。


龍瑛宗も彼の家族も文学関連物を非常に大切に保管しており、台湾文学館設立準備期間(1997年)には当館初の寄贈作家となりました。寄贈品は重要な文学誌、図書、直筆原稿、写真、器物、新聞の切り抜きなど1000点余りに達します。なかでも『文芸台湾』創刊号、「故園秋色」直筆原稿などは「文化資産保存法」(文化財保護法)の「重要文化財」と「一般文化財」に指定されています。本展では、龍瑛宗とその家族の無私に貢献したいという気持ちに対し感謝の意を示すとともに、より多くの人に龍瑛宗の作品に触れていただき、美に溢れる芸術と深く育まれた台湾文学を感じていただくことを願ってやみません。


パパイヤの街」、雑誌『改造』19卷4号、1937年4月

図1 「パパイヤの街」、雑誌『改造』19卷4号、1937年4月。


銀行員作家のオフィスデスク、リアルとファンタジーの間で文学の夢を実現

図2 銀行員作家のオフィスデスク、リアルとファンタジーの間で文学の夢を実現。


「杜南遠の知識を探る旅」ゲームの様子

図3 「杜南遠の知識を探る旅」ゲームの様子。


2015年7月14日記者会見を開催

図4 2015年7月14日記者会見を開催、龍瑛宗の次男である劉知甫一家と娘である劉淑恵、林瑞明前館長、翁誌聡館長、蕭淑貞副館長、展示企画担当の林佩蓉、程鵬升との記念撮影。会場にて。